レオロジー(Rheology)とは、物質の流動と変形を取り扱う近代科学の一分野です。対象とする物質は問わず、弾性論、塑性論、流体力学等で取り扱うには複雑すぎる物質や、現象が研究対象になります。レオロジーの目的は、物質の複雑な力学挙動を分子論的、構造論的に解明すること、及びそれらの成果を工業に応用し技術の革新や、製品の性能の向上に役立てることです。工業材料のレオロジー挙動が、実際の作業工程において重要な役割を演じることは多く、プラスチック、繊維、ゴム、パルプ、油脂、接着剤、セラミック、薬品、金属材料など、レオロジーが関与する工業分野は広がっております。最近では、自動車、電気、航空機工業などの材料のユーザーや、石油、石炭の採掘関係などにおいても、レオロジーの役割が大きく重要になってきています。
一般社団法人日本レオロジー学会 第25期会長
酒井 啓司(さかい けいじ)
2021 年 5 月
【会 長 挨 拶】
2021年5月より2年間、日本レオロジー学会の会長を拝命いたしました。レオロジー学会は1973年1月1日に創立され、まもなく記念すべき50周年を迎えます。学会の創立にご尽力され、またその後の発展に多大なる貢献をいただき、さらには学会活動を通して多くの偉大な研究成果を発信し続けてきた数多くの先輩各位、ならびに現学会員の皆様に深く感謝申し上げます。私も微力ではありますが、レオロジー学会会員の皆様とともに学会の発展のため、さらにはすべての流体を糧とする産業界・学会に貢献すべく努力する所存です。
レオロジーは、流れ、形を変え得るあらゆる物質を研究対象としてきました。医薬品、石油製品、食品、化粧品、ポリマーなど液体を材料として、あるいは製品として扱うあらゆる工業分野では、「どのように流れるか、変形するか」というレオロジーの知識は必須のものです。あるいは次世代の機能性材料として期待されるコロイド、液晶、生体系材料などの複雑流体と呼ばれる物質群は、レオロジー的なアプローチによってそのミクロな構造と運動のダイナミクスに迫ることができます。さらには大気や海洋における流れや拡散は、海洋汚染や温暖化などの環境問題の解法を見つける上での重要な鍵となります。このようにレオロジーは現代社会にとって必要不可欠な知識と技術を提供します。
一方で「流れる」ということがどういうことか、実はいまだによくわかってはいません。分子や原子の間の相互作用エネルギーを考えて、これが最小になるように配列すると、分子や原子が密集して動かない固体という相が出てきます。それぞれの分子や原子に十分なエネルギーを与えてその相互作用が無視できるようになると、自由に形を変えるごく希薄な気体という相が出てきます。ではその中間の相は、なぜ密集していながら流れるのでしょうか?この「液体とは何か?」という問いかけも、レオロジーの重要な研究対象です。このようにレオロジーの研究分野は、基礎から応用、学術から工業と幅広い分野に及んでいます。
さてこのように、レオロジーは流れ変形する実体としての物質を対象として扱ってきたわけですが、一方で昨今のコロナウイルスの事案を通して、地球規模でのモノの流れや人の流れが注目を集めるようになりました。(「物流」という言葉はありましたが、2021年5月現在では「人流」という用語も登場してきました。そのうちこれも広辞苑に載るかもしれません。)さらに人の口に戸は立てられぬ、とはよく言ったもので、情報の急速な流動・拡散現象はいよいよそのスピードを増し、これにともなって情報の制御・漏洩防止といった新たな流れの制御、といった事案も重要な研究対象となっています。
一般社団法人日本レオロジー学会 第25期役員名簿
任期: 2021 年 5 月 ~ 2023 年 5 月
役職 | 氏名 | 所属 |
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会長 | 酒井 啓司 | 東京大学 |
副会長 | 井上 正志 | 大阪大学 |
副会長 | 三浦 靖 | 岩手大学 |
理事 | 新井 武彦 | 英弘精機株式会社 |
理事 | 猪股 克弘 | 名古屋工業大学 |
理事 | 浦山 健治 | 京都大学 |
理事 | 高橋 勉 | 長岡技術科学大学 |
理事 | 田中 敬二 | 九州大学 |
理事 | 田村 英子 | 花王株式会社 |
理事 | 徳満 勝久 | 滋賀県立大学 |
理事 | 中村 浩 | 株式会社豊田中央研究所 |
理事 | 西野 孝 | 神戸大学 |
理事 | 新田 晃平 | 金沢大学 |
理事 | 増渕 雄一 | 名古屋大学 |
理事 | 山本 剛宏 | 大阪電気通信大学 |
監事 | 梶原 稔尚 | 九州大学 |
監事 | 那須 昭夫 | 資生堂グローバルイノベーションセンター |
正社員 | 621名 |
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学生会員 | 5名 |
公共会員 | 3件 |
賛助会員 | 47事業所49口 |
■ 個人情報保護規定
レオロジー関係の総説、原著論文、解説記事、会告には学会活動のお知らせなどを掲載しています。
研究発表のほか、学会賞受賞講演、同時に年次総会を行います。
レオロジー関係では国際的にもよく知られた国内最大の研究集会です。
レオロジーの基礎と測定法に関する初級講座で、1981年開講以来毎回約100名の受講者があり、工業技術者のレオロジー入門コースとして極めて高い評価を得ています。
「講話レオロジー・クラシック」、「食品レオロジー講習会」、「京葉地区特別企画レオロジーイブニングセミナー」を開催しております。
1983年、1984年、1988年、1996年、及び2002年には国際シンポジウム、1991年には日中レオロジー会議、1994年には第1回太平洋レオロジー会議、2010年には第5回太平洋レオロジー会議を主催しました。2016年にはレオロジー国際会議(ICR2016)を主催しました。