日本レオロジー学会誌英文論文の要旨 

47巻3号(2019年6月14日発行)から、掲載しています。

Vol.49,No.1に掲載されている英文論文の要旨

pp. 1-5 【英文タイトル】Characteristic Rheological Behaviors in Startup Shear of Entangled Polymer Melts

【論文タイトル】

スタートアップせん断流動下におけるからみあった高分子メルトの特徴的な挙動

【著者名】

Wei YOU , Wei YU

【論文の要旨】

本研究では,ポリスチレン(PS)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)がスタートアップせん断流動下で示す特徴的なレオロジー挙動を調べた.オーバーシュート挙動の詳細な解析を通して示された,予想外の特徴は以下の通りである.PSメルトでは,せん断速度が終端時間の逆数よりも大きいとき,ピーク応力とピーク時間の関係は指数則で表され,その指数は-1/2であった.一方でPMMAでは,せん断速度を増すにつれて指数が-1, -1/4, -1/2と変化した. その結果,応力と時間をプラトー弾性率とラウス緩和時間で正規化しても,ピークせん断応力とピーク時間の関係は普遍的ではなく,化学物質に依存していることがわかった.この非普遍性は,他の文献データにも見られる.

 

pp. 29-39【英文タイトル】Relationship Between Flow Properties and Elastic Stresses of Dilute and Ultra-Dilute Polymer Solutions Passing through 

Small Apertures

【論文タイトル】 

微小孔を通過する希薄および超希薄高分子水溶液の流動特性と弾性応力の関係

【著者名】

牛田 晃臣, 佐藤 大祐, 鳴海 敬倫, 長谷川 富市

【論文の要旨】

      緩和時間とひずみ速度から定義されるワイセンベルグ数は粘性力と弾性力の比であり,微小サイズの高ひずみ速度域においては,希薄および超希薄の高分子水溶液の流動特性に対して弾性が影響する可能性がある.しかしながら,通常の手法では,低弾性かつ高ひずみ速度のため,弾性を正確に測定することは困難である.本研究では,代表長さ122 μm1.1 mmのスリットを通過する希薄および超希薄高分子水溶液(PEOおよびPAA)について,圧力損失およびジェット推力の測定により,流動特性および弾性応力を調べた.水およびシリコンオイルの場合,実験結果はNavier-Stokes方程式による予測値と一致した一方,PEOおよびPAAの場合,水およびシリコンオイルの場合よりも低い値となった.実験結果を考察するため,ジェット推力から弾性応力を算定した.また,弾性応力は平均流速に依存することを示し,流動特性と弾性応力の関係を明らかにし,キャピラリー数の点から表面張力の影響も考察した.


pp. 15-27【英文タイトル】Effect of Molar Concentration on the Flow Behavior of Micellar Solutions Passing through Small Slits

【論文タイトル】 

微小スリットを通過するミセル溶液の流動挙動に対するモル濃度の効果

【著者名】

牛田 晃臣, 千葉 瞭介, 岩崎 光, 佐藤 大祐, 鳴海 敬倫, 高橋 勉, 斎藤 啓太, 長谷川 富市

【論文の要旨】

スリットを通過する3種類のミセル溶液(Lipoquad C-50, Lipothoquad O/12, CTAB)の流動挙動を複屈折測定により明らかにした.Lipoquad C-50の場合は,スリット内部および上流部に高い複屈折を示した一方,Lipothoquad O/12の場合はほとんど発現しなかった.CTABの場合,時間経過に対して不安定な複屈折を示した.すなわち,界面活性剤の種類により異なる挙動を示した.これらの実験結果を考察するため,モル濃度を0.1倍と10倍(CTABのみ2倍)にしたミセル溶液による実験を行った.Lipoquad C-50の場合,0.1倍と10倍のモル濃度では複屈折が発現しなかった一方,モル濃度10倍のLipothoquad O/12の場合においては,モル濃度1倍のLipoquad C-50の場合と同様の複屈折分布を示した.モル濃度2倍のCTABはモル濃度1倍のCTABと同様であった.これらの実験結果を統一的に整理するために空間的拘束度(DSC, 任意体積内に存在するミセル数)を定義し整理した.その結果,複屈折が発現したLipoquad C-50Lipothoquad O/12は,DSC5.9 × 10-6 molから1.2 × 10-5 molの範囲(CTABの場合,DSC1.8 × 10-6 molから7.3 × 10-6 molの範囲)であり,急縮小急拡大流れにおける流動誘起構造の発現にはある程度の拘束性が必要であることが分かった.

Vol.48,No.5に掲載されている英文論文の要旨

pp.259-269【英文タイトル】

Nonlinear Rheology of FENE Dumbbell with Friction-Reduction : Analysis of Brownian Force Intensity through Comparison of Extensional and Shear Viscosities【論文タイトル】 

摩擦低下を伴う FENE-ダンベルの非線形レオロジー:伸長粘度とずり粘度の比較を通じた熱揺動力強度の解析

【著者名】

渡辺 宏松宮 由実佐藤 健

【論文の要旨】

流動下で摩擦係数 z が等方的に減少する FENE-ダンベルについて, 規格化伸長粘度 hE/hE0 および規格化ずり粘度 hE/hE0 (添え字 0 は線形域での量を表す) を理論的に解析した.これらの規格化粘度は, 定常流動下での摩擦低下率 rz = z/zeq, バネ定数 k の増加率 rk = k/keq, および熱揺動力強度  B  の変化率  rB = B/Beq (添え字 eq は平衡状態での量を表す) を用いて, hE/hE0 = (rB/rk){1-2(rz/rk)Wi}-1{1+(rz/rk)Wi}-1, h/h0 = (rB/rk) と表現されることを見出した.Wi はワイゼンベルグ数である.この解析的表現から, 熱揺動力強度  B の特徴的挙動, 例えば, 規格化粘度が同一指数のベキ乗型流動軟化 hE/hE0 h /h0 Wi-0.5 を示す場合には 2zkBT < B < 2z eqkBT (kBT は熱エネルギー) であること, などが見出された.これらの結果は, hE/hE0 h /h0 のデータの比較から流動下での熱揺動力強度を実験的に検討することが可能であることを示唆する.

 Vol.48,No.4に掲載されている英文論文の要旨

pp.177-183【英文タイトル】Entanglement Molecular Weight

【論文タイトル】 

からみあい点間分子量

【著者名】

増渕 雄一土肥 侑也,畝山 多加

【論文の要旨】

からみあい点間分子量Meは,からみあい高分子系を特徴づける物性量として議論されることがある.しかし元来,Meは平坦部弾性率GNを説明するための理論的なパラメーターであり,GNとの関係は理論ごとに異なる.よって,導出のための理論が明示されずにMeが用いられると誤った議論を誘引する恐れがある.一方,分子シミュレーションにより分子間の幾何的なネットワークを抽出する試みも行われている.しかしそのようなネットワークと高分子のからみあい運動の関係は不明である.変形下でのからみあい密度の減少も議論されることがあるが,からみあい密度が一定の分子理論でもレオロジーは再現されることに注意が必要である.

 

pp.185-190【英文タイトル】Stress-Optical Coefficients for D-Glucans in Ionic Liquid Solutions

【論文タイトル】 

イオン液体溶液中におけるD-グルカン類の応力光学係数

【著者名】

堀中 順一,大川 純弥,瀧川 敏算

【論文の要旨】

セルロース,プルランおよびカードランという3種類のDグルカンの濃厚溶液をイオン液体を溶媒として調製し,ずり変形を加えた際の応力と複屈折の関係を調べた.各溶液について両者が比例する応力光学則がよく成り立った.比例定数である応力光学係数は,セルロースの場合正の値になりその絶対値は3つのDグルカンの中で最も大きいことがわかった.プルランは正の小さな応力光学係数をもち,イオン液体中で得られる値はフィルムのそれに近いことがわかった.一方,カードランについては応力光学係数が負の値であることがわかった.同じDグルコースを繰り返し単位にもつ多糖であっても,ユニット間の結合様式が異なることにより,応力光学係数の絶対値および符号が大きな影響を受けることがわかった.

 

pp.191-198【英文タイトル】Similarity in Linear Viscoelastic Behaviors of Network Formation and Degradation Processes

【論文タイトル】 

網目形成および分解過程における線形粘弾性挙動の類似性

【著者名】

片島 拓弥,加賀美 凌,鄭 雄一,酒井 崇匡

【論文の要旨】

高分子ゲルの網目形成と分解過程の設計は,ライフサイクルを制御するため重要である.これまでにもゲルのバイオマテリアル応用を指向した網目形成・分解過程制御の多くの研究があったが,その多くはふたつの過程は逆再生的であるという仮定に基づいていた.この仮定は自明ではないが,網目の結合性を実験的に評価することが困難であったため,これまで実証されてこなかった.本研究では,単一の高分子ゲルで網目形成から分解までの連続的なプロセスを観察するために,分解ユニットを有するTetra ゲルを用いた.網目形成および分解過程の線形粘弾性の時間発展を測定した.網目形成・分解過程における等しい結合率での線形粘弾性スペクトルと,ゲル化臨界点はよく一致した.これらの結果は,網目形成と分解が逆再生的であることを強く示唆している.また,これらの実験結果に基づき,Winter-Chambon則よりも単純化されたゲル化の判断基準を提案した.

 

pp.199-206【英文タイトル】Thermodynamic Effect on Viscosity and Density of a Mixture of 4-Cyano-4'-pentylbiphenyl (5CB) with Dilute Dimethyl Phthalate (DMP)

【論文タイトル】 

希薄DMP5CB 混合系の粘度と密度に対する熱力学的効果

【著者名】

島田 良子, 渡辺 宏

【論文の要旨】

少量のDMP3.1 wt%5CBの混合系について, 密度 r と粘度 h を検討した. この系は TIN* @ 27.0 ˚C において等方-ネマチック相転移を示したが, 5CB系とは異なり, 転移点における r h 不連続変化を示さなかった. この不連続性の欠落は, 混合系の転移が等方相とネマチック相への相分離を伴うことに由来し, ネマチック相のみに着目すれば, 混合系と純5CB系に本質的な差はない. しかし, TIN* より高温の等方一相領域内で温度を低)させると, 混合系の r h  は、TIN*~ TIN*+10 K という広範な温度域において, 十分高温で観察される線形熱膨張挙動およびEyring/Andrade型挙動からの正のずれを示した. 5CB系では, このずれは転移点のごく近傍でしか起こらない. 従って, 混合系の r h  が示したずれは, 5CB系では存在しない濃度揺らぎ(浸透圧の効果)に起因すると考えられる.


 Vol.48,No.3に掲載されている英文論文の要旨

pp.153-160【英文タイトル】Microscopic Origin of Elastic and Plastic Deformation in Poly(Ether-Block-Amide) Elastomers under Various Conditions

【論文タイトル】 

さまざまな変形条件下におけるポリアミドエラストマーの弾塑性変形の微視的起源

【著者名】

木田 拓充, 濱崎 桂輔, 比江嶋 祐介, 前田 修一, 新田 晃平

【論文の要旨】

ポリアミド12をハードセグメント, ポリエーテルをソフトセグメントとするポリアミドエラストマー(PAE)の一軸引張試験やサイクル試験過程における微視的な変形挙動を赤外吸収分光測定や小角光散乱測定を用いて評価し, PAEの弾塑性変形の微視的な起源を解明した. ガラス転移温度Tg以下では, ソフトセグメント分率wsに依らず, いずれのPAEともに応力ひずみ曲線上に明瞭な降伏点が現れた. また, 構造解析の結果より, 球晶構造の破砕およびキャビテーションの発生が観察されており, 典型的なプラスチックの一軸変形挙動であった. 一方, Tg以上においてwsが高いPAEはエラストマー的な応力ひずみ挙動を示し, 変形過程において球晶構造が弾性的な変形を示した. このようなPAEの弾性的および塑性的な変形挙動は結晶ラメラ間に存在する非晶分子の運動性に起因していることが示唆された.

 

pp.161-168【英文タイトル】Dynamic Light Scattering Study on Particle Diffusion in Slide-Ring Gels:Enhanced Fluctuation of Sliding Networks

【論文タイトル】 

環動ゲル中におけるナノ粒子の拡散挙動

【著者名】

保田 侑亮,松延 比呂伎,成田 哲治,横山 英明,眞弓 皓一,伊藤 耕三

【論文の要旨】

      環状分子によって高分子鎖が架橋された環動ゲルでは,高分子鎖が架橋点をすり抜けてスライドすることで網目構造が揺らいでいると考えられており,この網目構造の熱揺らぎが環動ゲルの低い弾性率といった特異な物性の起源となっている.本研究では,環動ゲルの中にナノ粒子を分散させ,そのナノ粒子の拡散運動を動的光散乱法によって測定することで,環動ゲルにおける網目揺らぎについて調べた.共有結合によって架橋された固定架橋ゲルにおいては,架橋密度の増加に伴って,ゲル中に分散させたナノ粒子の運動性は網目によって束縛され,粒子の拡散係数は単調に減少した.一方で,環動ゲルの場合,架橋密度を増加させても,ゲル内部のナノ粒子は比較的大きな拡散係数を示した.このことから,環動ゲル中では高分子鎖が架橋点をスライドすることで網目構造が揺らいでおり,その結果として,架橋ネットワーク中においてもナノ粒子が高い運動性を維持していることが示唆された.


 Vol.48,No.2に掲載されている英文論文の要旨

pp.65-78 【英文タイトル】Dissipation in Langevin Equation and Construction of Mobility Tensor from Dissipative Heat Flow

【論文タイトル】Langevin方程式の散逸と散逸熱流からの易動度テンソルの構成

【著者名】畝山 多加志


【論文の要旨】物質のレオロジー的性質はエネルギー散逸と強く関係しており,それゆえ散逸を理解しモデル化することはレオロジーの観点からも重要であると言える.メソ・マクロスケールの対象のレオロジー的性質を調べる際には散逸をともなう運動方程式モデルの構築が重要である.そのような運動方程式を構築する方法はいくつかあるものの(Onsagerの方法等),正当性は十分に保証されないことが多い.本論文ではメソスケールのLangevin方程式の散逸についてゆらぎのエネルギー論の観点から詳細に解析する.熱浴から系へ移動する散逸熱流は特定の変数変換によって形が変わらず共変であり,散逸熱流に基づいてLangevin方程式を構築したり粗視化を行ったりすることが可能であることを示す.具体的には,易動度テンソルを散逸熱流から求め,自由エネルギーと組み合わせることでLangevin方程式を構築する.例として,ダンベルモデルや濃度場の拡散型方程式に対して提案手法が適用できることを示す.


pp.91-99【英文タイトル】Dynamic Moduli Mapping of Rubber Blends by Nanorheological Atomic Force Microscopy

【論文タイトル】ナノレオロジー原子間力顕微鏡によるゴムブレンドの動的弾性率マッピング

【著者名】植田 英順,中嶋 健


【論文の要旨】ポリマー間の相溶性が物性に与える影響を調べるために著者らが開発したナノレオロジー原子間力顕微鏡を利用した.試料としてはスチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムのブレンドを対象とした.これらの試料は部分相溶状態にあるが,STEMや従来のAFMでは単に非相溶な海島構造にしか見えない.しかし高周波数帯域で貯蔵弾性率,損失弾性率,損失正接などをマッピングできる本手法を用いることで新たな情報が得られた.SBRリッチ相はDSCによるガラス転移温度の変化からも純粋なSBRとは異なることがわかっており,測定した全ての周波数域で粘弾性情報にも違いが見られた.一方,BRリッチ相はDSCではその相溶性を検出できなかったが,動的不均一性と呼ぶべき現象を確認した.すなわち低周波数域ではBRリッチ相はほとんど純BRと同等の物性を示すが,SBRがガラス化する周波数域から上の周波数ではBRリッチ相の貯蔵弾性率,損失弾性率が純粋なBRのものに比べ高くなっていた.


pp.101-107 【英文タイトル】Toughening Effect of Clay Particles on Poly(Lactic Acid)/Natural Rubber Blend

【論文タイトル】「ポリ乳酸と天然ゴムのブレンドにおけるクレイ粒子のタフ化効果」

【著者名】Jung Hyun AHN, Joung Sook HONG, Kyung Hyun AHN


【論文の要旨】 本研究ではポリ乳酸(PLA)と天然ゴム(NR)のブレンドのタフ化におけるクレイの効果を調べた.PLANR70/3060/4050/50の比率で混合し,クレイとしてはオルガノクレイとモンモリロナイトを用いた.ブレンド物の線形粘弾性測定とモルフォロジー観察を行った.NRの混合比率が増えるにつれてNRドメインの粗大化が見られ,モルフォロジーが海島構造から共連続構造に変化した.モルフォロジーの変化にともなって引張強度と破断伸度も変化した.またクレイの添加もモルフォロジーに影響した.特にクレイの局在化が影響した.PLAに局在するモンモリロナイトはNR相の粗大化に寄与する一方,オルガノクレイは界面に局在してNR相の分散に寄与した.この結果,海島構造をとる場合は,0.5wt%のオルガノクレイの添加によって破断伸度が60%向上した.一方,共連続構造の場合はクレイの種類によらず破断伸度の増加が見られた.(日本語訳 増渕雄一)


pp. 113-120【英文タイトル】Rheological Properties of Low Oil Mayonnaise by Replacing Oil Droplets with Agar Micro-Gels

【論文タイトル】寒天ミクロゲルで油分の一部が置換された低油分マヨネーズのレオロジー特性」

【著者名】金田 勇, 柴田 章吾


【論文の要旨】油分の一部を寒天マイクロゲルに置き換えた低カロリーのマヨネーズプロトタイプを構築した. 5 s-1での通常マヨネーズ(F-mayo)の見かけ粘度は36.0 Pa×sであったが, 油分を半減させると(H-mayo)その値は1.75 Pa×sに急激に減少した. しかし,オイルの半量を寒天ミクロゲルで置換したマヨネーズ(A-mayo)の粘度は38.2 Pa×sと通常マヨネーズと同程度に回復した. さらに,weak-gel modelで動的弾性率を分析することにより, マヨネーズのコロイドレベルの構造に関する情報を得た. 系内のコロイド粒子の空間密度に関連する配位数zF-mayoでは13.9であったが, H-mayoの値6.54F-mayoのほぼ半分だった. このようにzの値と油分配合量の間に高い相関があることからはモデルマヨネーズ内のコロイドレベルの構造に関する情報を提示していると考えられる. 一方で A-mayoz値は11.7と同じ油分量のH-mayoに対して大幅に改善された. これらの結果から, 寒天マイクロゲルを配合したは低油分マヨネーズは通常マヨネーズに類似した流動特性, すなわちテクスチャーを示すことが示唆された.


pp. 121-128【英文タイトル】Modeling of Floc Forming Suspensions Coupling the Population Balance Equation for Floc Aggregation-Breakage and the White-Metzner Model

【論文タイトル】フロックの凝集・破壊のポピュレーションバランス方程式とWhite-Metznerモデルを組み合わせたフロック形成サスペンションのモデリング

【著者名】山本 剛宏


【論文の要旨】著者らの過去のモデルに基づいて,流動中のフロックの凝集と破壊を考慮したフロック形成サスペンションの粘弾性モデルを開発した.本モデルでは,フロックの凝集と破壊を模擬するためにポピュレーションバランス方程式を用いた.過去のモデルと同様に,粘度のフロック体積分率依存性をKrieger-Doughertyモデルで記述し,粘弾性の効果を表現するためにWhite-Metznerモデルを用いた.さらに,有効体積分率に依存する弾性係数関数を用いて緩和時間のフロック体積分率依存性を取り入れた.単純せん断スタートアップ流れのシミュレーションを行い,本モデルのレオロジー挙動を調べ,シミュレーション結果より,フロックサイズ分布の時間変化は弾性係数に大きく依存することが分かった.そして,スタートアップ流れ開始直後の第法線法力差の挙動に弾性係数による違いが現れた.本モデルは,粘度と緩和時間のフロックサイズ分布依存性を表現するフロック形成サスペンションの簡単な粘弾性構成モデルとなり得る.


pp. 129-135【英文タイトル】Flow-induced Orientation of a Polymer Solution in a Planar Channel with Abrupt Contraction and Expansion

【論文タイトル】平面急縮小・急拡大流れにおける高分子水溶液の流動誘起配向」

【著者名】佐藤 大祐,鳴海 敬倫,牛田 晃臣

【論文の要旨】本研究では,平面急縮小・急拡大流れにおけるキサンタンガム水溶液(濃度0.5 wt.%)の流動誘起配向を流動複屈折測定および速度分布計測によって調べた.試験流路としてスリット長が1 mm2 mm3 mmおよび10 mm4種類の4:1:4の平面急縮小・急拡大流路を用いた.流路中心線上における複屈折分布および速度分布を詳細に検討したところ,急拡大後における高分子の流動配向の変化は,流路のスリット長によって大きく異なることが明らかになった.スリット長が3 mm10 mmの場合,拡大部後に生じる負の伸長流れによって,一時的に高分子は流れ方向に対して直交方向に配向した.対照的に,1 mmおよび2 mmのスリット長では,同様の配向現象は観測されなかった.これらの結果は,平面急拡大流れにおける高分子の流動誘起配向が縮小部と拡大部を繋ぐスリットの長さに大きく影響することを示唆する.

Vol.48,No.1に掲載されている英文論文の要旨

pp.1-14【英文タイトル】A Review on Transport Phenomena of Entangled Polymeric Liquids

【論文タイトル】からみあい状態にある高分子流体の移動現象論

【著者名】佐藤 健

【論文の要旨】化学工学において,物理量の移動を扱う学問分野を移動現象論と呼ぶ.この分野では,対象とする現象を特徴付ける物理量の流束の保存則によって支配方程式が導かれる.例えば流体の移動現象においては,運動量の保存方程式から運動方程式が導かれる.この運動方程式を解くためには,流体の変形と応力を結びつける構成方程式が必要となる.構成方程式が単純な関係で記述できるニュートン流体の移動現象の問題の場合,その方法論は確立されている.一方で,粘弾性流体である「からみあい状態にある高分子流体」の場合,その構成方程式は,単純な関係として記述できない.これは,高分子が時空間的に高い階層構造を持つことに由来する.本総説では,高分子流体の移動現象論に焦点を当て,高分子の階層構造に由来する様々な時空間スケールにおける理論・シミュレーション法をまとめる.さらに,各スケールを連結するマルチスケールシミュレーション法について,最新の研究を紹介する.

 

pp.15-25【英文タイトル】Nonlinear Viscoelastic Behavior of Air-Water Interface Containing Surfactant-Laden Nanoparticles

【論文タイトル】界面活性剤とナノ粒子を含む空気-水界面の非線形粘弾性挙動

【著者名】Badri VISHAL, Pallab GHOSH

【論文の要旨】泡は我々の日常生活の中で広く利用されている.泡の安定性は,2つの空気―水界面に挟まれた水相薄膜の安定性に依存する.また,そのプロセッシングにおいて泡の膜は大変形を受ける.そのため,空気―水界面の大振幅振動ずり(LAOS)流動による研究は,泡の安定性を研究する上で非常に重要である.本論文では,LAOS下での空気―水界面の粘弾性挙動を詳しく調べた.界面は,濃度0.1 mol m-3の臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム水溶液と0.5 w/vのシリカナノ粒子により構成した.LAOS挙動は,ひずみサイクル内での応力波形とLissajous-Bowditch曲線を解析することで評価した.また,フーリエ変換とChebyshev多項式を用いた界面のLAOS流動の記述を行った.空気―水界面は,LAOS流動下で,ひずみ硬化とずり増粘挙動を示した.一方,非常にひずみ振幅が大きい場合には(45%程度),ずり減粘挙動が観察された.(日本語訳: 浦川 理)


pp.27-35【英文タイトル】Dielectric Relaxation of Type-A Rouse Chains Undergoing Reversible End-Adsorption and Desorption

【論文タイトル】可逆な片端吸脱着を示す A型ラウズ鎖の誘電緩和

【著者名】 鑫阳, , 松宮 由実, 渡辺 宏, 権 永敦

【論文の要旨】ナノコンポジット中の吸着高分子鎖のダイナミクスを調べる糸口として,A 型双極子を持ち,片端にて平衡吸脱着を示すラウズ鎖の誘電緩和の理論解析を行った.この鎖のボンドベクトルをラウズ固有関数で展開することで,複素誘電率と誘電緩和時間の解析的表現が得られた.吸着状態の鎖と脱着状態の鎖は相互のコンフォーメーションの輸送を通じて動的にカップルしているため,吸着鎖の誘電緩和はこのカップリングがない場合に比べて加速され,脱着鎖の誘電緩和は減速されることが見出された.

 

pp.37-42【英文タイトル】Effects of Constraint-Release on Entangled Polymer Dynamics in Primitive Chain Network Simulations

【論文タイトル】プリミティブチェーンネットワークシミュレーションにおける高分子のからみあい運動に対する束縛解放の効果

【著者名】増渕 雄一

【論文の要旨】からみあった高分子の運動では,レプテーションと全長揺らぎに加えて,束縛解放(CR)が重要な緩和機構である.しかしCRの性質は完全には明らかになっていない.本研究ではCRを人為的に停止させた環境での分子運動をプリミティブチェーンネットワークシミュレーションで調べた.粘弾性緩和時間,末端間ベクトル緩和時間,拡散定数,平坦部弾性率の分子量依存性を調べ,それらにおけるCRの効果を見た.結果は文献中の実験的な結果と妥当に一致した.CRがある通常のメルトと比較したところ,緩和時間と拡散定数にはCRによる分子運動の加速が見られた.このCRによる加速は分子量が大きくなるほど小さくなった.CRによる加速の分子量依存性により,緩和時間の分子量に対するべき指数がCRに影響される.一方,平坦部弾性率は,分子量依存性も含め,CRに影響されなかった.これらの結果は時間-応力不一致とよばれる,緩和時間と弾性率の理論からのずれを説明する.

  

pp. 43-48【英文タイトル】Simulations of Startup Planar Elongation of an Entangled Polymer Melt

【論文タイトル】 平面伸長流動下での高分子溶融体の過渡伸長粘度シミュレーション

【著者名】武田 敬子,増渕 雄一,杉本 昌隆,小山 清人,サティシュ スクマラン

【論文の要旨】単分散からみ合い高分子溶融体について平面伸長流動下でプリミティブチェインネットワークシミュレーションによる過渡伸長粘度予測を行った.第一平面伸長粘度は,一軸伸長粘度と同様に,ラウス緩和時間に基づくワイゼンベルグ数(WiR)1以上でひずみ硬化を示した.この計算結果をデカップリング解析することにより,配向と伸長などの応力への寄与にわけて議論した.この結果,平面伸長では一軸伸長と比べて分子鎖は低い配向を示したが,からみ合い数の減少率が低く,それらが相殺しあい一軸と平面の定性的類似をもたらすことを明らかにした.第二平面伸長粘度はせん断の実験結果に似たオーバーシュートを示した.第二平面伸長粘度と配向のひずみ最大値はWiR以下では同様のWiR依存性を示し,応力は配向に起因することを明らかにした.

 

pp.49-54【英文タイトル】Rheological Test for the Homogeneity of Aqueous Blends of Associative Polymer Network and Entangled Linear Polymer

【論文タイトル】会合性高分子網目とからみ合った線状高分子混合水溶液の均質性に関するレオロジー的評価

【著者名】千葉 高充,片島 拓弥,浦川 理,井上 正志

【論文の要旨】一時網目と絡み合い高分子の混合系として,hydrophobically ethoxylated urethane (HEUR)とポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)の混合水溶液を用い,その線形粘弾性挙動を調べた.この混合水溶液は,目視では透明で均質な状態になることを見出したため,その分子レベルでの均質性を調べる目的で,粘弾性スペクトルを詳細に解析した.具体的には,混合系の平坦弾性率GN,mixが,HEUR濃度ϕHを固定した時にPAANa濃度ϕPにどの様に依存するかという点に着目した.ϕPの増加によりGN,mix増加するが,そこにPAANaHEURのヘテロな絡み合いが寄与するとして,Wuの理論に基づき,ヘテロな絡み合いの程度を弾性率の値G0N,H−Pとして定量的に評価した.また,ϕHの値が異なる系の粘弾性測定結果についても,同様の解析を行い,すべてGN,mixデータが同一のパラメータで記述できることを見出した.この結果より,HEUR/PAANa水溶液系が分子レベルにおいても,均一に混合し相互にからみ合っていると結論した.

 Vol.47,No.5に掲載されている英文論文の要旨

pp.197-205

【英文タイトル】Dynamics in Miscible Polymer Blends and Associative Polymers

【論文タイトル】相溶性ポリマーブレンドと会合性ポリマーのダイナミクス

【著者名】Quan CHEN

【論文の要旨】高分子レオロジーの分野における重要な課題は,トポロジー的相互作用,摩擦相互作用,高分子鎖間の会合を含む様々な分子間相互作用­を理解することである.私たちは,この10年程の間,高分子ダイナミクスに及ぼす多種類の分子間相互作用の影響に焦点を当ててきた.具体的に着目したのは,動的非対称性の高い相溶性高分子ブレンドの成分間に働くトポロジー的相互作用と摩擦相互作用,また,物理的会合系におけるイオン相互作用や水素結合である.(日本語訳: 浦川 理)


pp. 207-217

【英文タイトル】Concept of an Evaluation Technique for Planar Elongational Stress and Relaxation Time Using Hoop Stress in Swirling Flow

【論文タイトル】旋回平面伸張流動場のたが応力による平面伸張応力評価手法の提案

【著者名】杉原 幸信,野崎 要,高橋 勉

【論文の要旨】一定の曲率で旋回する平面伸張流動場に生じるたが力に着目し,流脈線の可視化像から低粘度粘弾性流体の見かけの平面伸張粘度および緩和時間を評価する手法を提案した.縮小流路とハイドロダイナミックフォーカシング技術を組み合わせることで安定したサンプル流体のリボン状流脈線を形成した.本研究では,二次元旋回縮小部における流脈線の半径位置がサンプル流体に作用する平面伸張応力によるたが力と遠心力のつり合いによって決まると仮定した.そして,流脈線の半径位置の観察を通してサンプル流体に作用する平面伸張応力を推定することで,見かけの平面伸張粘度を評価した.さらに,直線状の二次元縮小流路の流出口へ幅一定の旋回流路をつなげた場合,直線縮小部で生じた平面伸張応力は幅一定の旋回部を通過しながら徐々に緩和する.この平面伸張応力の緩和挙動に基づく流脈線の変動から緩和時間を評価した.

 Vol.47,No.4に掲載されている英文論文の要旨

pp. 133-142

【英文タイトル】Relationships between Diffusion and Viscoelasticity of Associative Polymer Networks

【論文タイトル】会合性高分子網目の拡散挙動と粘弾性の相関

【著者名】大西美優,片島拓弥,中畑雅樹,浦川理

【論文の要旨】両末端疎水化ポリエチレンオキシド (HEUR) は,高分子濃度によって末端基の疎水性相互作用によりフラワーミセルや一時網目構造を形成する.HEUR の粘弾性緩和は Maxwellモデルによって記述される.この緩和挙動の分子論的な理解のために,多くの試みがなされてきたが,その理解は不完全なままである.会合性高分子の緩和メカニズムを理解するために,私たちは線形粘弾性と光褪色後蛍光回復法を用いて拡散係数を評価した.高分子濃度が増加に伴い,自己拡散係数は減少し,粘弾性緩和は遅延した.これは,粘弾性緩和が高分子の拡散と相関していることを示唆している.粘弾性緩和時間内に HEUR 鎖が拡散する距離は高分子濃度に依らず,HEUR 鎖のサイズよりも 100 倍程度大きくなった.この差は,低濃度ではHEUR 鎖が単量体やフラワーミセルの形態をとって拡散していることを,高濃度では網目鎖の再結合過程の拡散が粘弾性緩和と比べて速い過程で起きていることを示唆している.


pp. 143-154

【英文タイトル】Effect of Inertia on Linear Viscoelasticity of Harmonic Dumbbell Model

【論文タイトル】ダンベルモデルの線形粘弾性における慣性の影響

【著者名】畝山多加志,仲井文明 ,増渕雄一

【論文の要旨】慣性を無視した過減衰のダンベルモデルは高分子やソフトマターのレオロジー的性質を調べるための簡単なモデルとして広く用いられている.通常,慣性の影響は運動量の緩和時間がボンドの緩和時間より十分に速いとして無視される.本論文では,慣性が調和ダンベルモデルの線形粘弾性に与える影響について理論的に解析した.理論解析より,運動量とボンドの緩和は動的に結合しており,運動量の緩和が十分に速くない場合には慣性によってボンドの緩和が影響を受けうることがわかった.また,慣性の効果が弱い場合に慣性の効果を実効的に取り込めるLangevin方程式モデルが得られた.このモデルは慣性が比較的弱い場合のボンドの緩和ダイナミクスをよく再現できる.単純な調和ダンベルモデルとRouseモデルを用いて慣性がどのように線形粘弾性に影響するかを議論する.


pp.155-159

【英文タイトル】Rheological Properties of Concentrated Solutions of a Branched Polysaccharide Dextran in an Ionic Liquid

【論文タイトル】分岐多糖であるデキストランのイオン液体濃厚溶液のレオロジー的性質

【著者名】堀中順一,山中亜祐美,瀧川敏算

【論文の要旨】イオン液体を溶媒として用い,4.1 ´ 102 kgm-3以下のデキストラン濃厚溶液を調製した.デキストランは分岐度が約4%で分子量が200万前後の高分子量試料を用いた.ゼロせん断粘度の濃度依存性から,濃度が1.7 ´ 102 kgm-3以上ではデキストラン同士のからみ合いが生じていると判断され,それ以上の濃度では動的粘弾性にゴム状領域が観測された.一方で,デキストランのからみ合い挙動が非常に特異的であることがわかった.動的粘弾性の結果から常法にしたがって求めたからみ合い点間分子量は濃度依存性を示さず2.3 ´ 104で一定値となった.これは分子鎖あたりのからみ合い点数が100程度であることを意味するが,得られた動的粘弾性のゴム状領域はそれほど明瞭ではなかった.この特異性はデキストランの分岐構造に由来し,デキストラン分子は長い枝からさらに密に枝が出ている構造をもつのではないかと推測した. 

Vol.47,No.3に掲載されている英文論文の要旨

pp. 99-104

【英文タイトル】Effect of Host-Guest Interaction on Swelling Behavior and Equilibrium Swollen State of Host-Guest Gel

【論文タイトル】ホスト‐ゲストゲルの膨潤挙動および平衡膨潤状態に対するホスト‐ゲスト相互作用の影響

【著者名】柏木優,片島拓弥,髙島義徳,原田明,井上正志

【論文の要旨】ホスト‐ゲストゲルは,β‐シクロデキストリンとアダマンタン間の動的架橋点により形成された超分子ゲルであり,強靭性と自己修復性を併せ持つ.先行研究から,ホスト‐ゲストゲルは動的架橋点に加えてトポロジカルな永久架橋点を有しており,これら2種類の架橋点が特異的物性を達成する要因であることを明らかにした.本研究では,ホスト‐ゲストゲルの膨潤挙動及び平衡膨潤状態に対する架橋点の効果を調べた.膨潤過程の解析から,動的架橋点は膨潤過程における高分子鎖の拡散にほとんど影響を及ぼさないことが明らかとなった.一方,競合剤下での平衡膨潤状態の解析から,水中における平衡膨潤状態においても動的架橋点は完全には解離せず,からみ合い点をトラップする働きを保持することが明らかとなった.これらの結果から,ホスト‐ゲストゲルの膨潤特性は,動的架橋点と永久架橋点の両方によって支配されていることが明らかとなった.


pp. 105-110

【英文タイトル】Rheological Evaluation of Carbon Nanotube Redistribution in Polymer Melt

【論文タイトル】高分子溶融体中におけるカーボンナノチューブ再分配のレオロジー的評価

【著者名】西川理穂, 好苑, 山口政之

【論文の要旨】高分子溶融体中における多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のブラウン運動を線形粘弾性測定により評価する手法を提案した.MWCNT3添加したポリカーボネートやポリエチレンに大きな変形を与えたのち,溶融状態で動的弾性率の時間変化を評価したところ,弾性率は時間と共に増加しやがて一定値に至ることが判明した.配向したMWCNTがネットワーク構造を形成するためである.また,弾性率の時間変化は,ブラウン運動によるMWCNT再分配に必要な特性時間を使用した簡単な式によって表すことができる.この特性時間はナノコンポジットの構造を制御するパラメータの1つと考えられる.


 pp. 111-117

【英文タイトル】Effect of Molecular Size on the Correlated Dynamics of Low-Mass Molecule and Local Chain Motion

 in Antiplasticized Polycarbonate

【論文タイトル】逆可塑化ポリカーボネート中における低分子と高分子鎖の相関運動に対する分子サイズの影響

【著者名】前田真衣,信川省吾,猪股克弘,山口政之

【論文の要旨】本研究では,逆可塑化ポリカーボネート(PC)中の高分子と低分子の運動の相関について調査した.逆可塑化は,低分子を添加することで高分子の弾性率が向上する現象である.極性低分子を添加した逆可塑化PCについて動的粘弾性測定と誘電緩和測定の実施し,それらの結果を比較したところ,低分子の運動性は25 oC以下では低く,それ以上の温度で高くなることが判明した.この運動性の温度依存性はマトリックスであるPCと類似しており,両成分の運動の相関性が示された.さらに,様々なサイズの極性分子を用い,PCの逆可塑化と局所運動に対する低分子のサイズの影響を調べた.その結果,室温(25 oC)の弾性率の増加の度合にはサイズの影響は確認されなかったものの,小さな低分子ほど,PCの局所運動に由来する緩和がブロードに観測された.さらに,低分子のサイズが小さくなるほど,運動の活性化エネルギーが低下し,マトリックスPCからの束縛が弱くなることも示された.


pp. 119-122

【英文タイトル】Structure and Viscoelastic Properties of Poly (Ether-Block-Amide) Thermoplastic Elastomers with No Ester Linkages

【論文タイトル】エステル結合が無いポリ(エーテルブロックアミド)熱可塑性エラストマーの構造と 粘弾性的性質

【著者名】前田修一,奥下洋司

【論文の要旨】硬質ポリアミドセグメントと軟質ポリエーテルセグメントからなる一連のエステル結合が無いポリ(エーテル - ブロック - アミド)熱可塑性エラストマーの構造と粘弾性特性を調べた.この研究で使用した全ての熱可塑性エラストマーは,固体状態で結晶ラメラを有する不均一な組織構造を示した.エラストマーの非晶質領域における不均一性および相溶性は試料組成に依存した.溶融状態での試料の動的弾性率には,相分離した液体に特有の明確で遅い緩和機構は観察されなかった.この結果は,ポリアミドとポリエーテルセグメントとの間の良好な相溶性のために,溶融試料が均一な構造を有していたことを示している.