英文論文の要旨 47巻3号(2019年6月14日発行)~

 Vol.47,No.5に掲載されている英文論文の要旨

pp.197-205

【英文タイトル】Dynamics in Miscible Polymer Blends and Associative Polymers

【論文タイトル】相溶性ポリマーブレンドと会合性ポリマーのダイナミクス

【著者名】Quan CHEN

【論文の要旨】高分子レオロジーの分野における重要な課題は,トポロジー的相互作用,摩擦相互作用,高分子鎖間の会合を含む様々な分子間相互作用­を理解することである.私たちは,この10年程の間,高分子ダイナミクスに及ぼす多種類の分子間相互作用の影響に焦点を当ててきた.具体的に着目したのは,動的非対称性の高い相溶性高分子ブレンドの成分間に働くトポロジー的相互作用と摩擦相互作用,また,物理的会合系におけるイオン相互作用や水素結合である.(日本語訳: 浦川 理)


pp. 207-217

【英文タイトル】Concept of an Evaluation Technique for Planar Elongational Stress and Relaxation Time Using Hoop Stress in Swirling Flow

【論文タイトル】旋回平面伸張流動場のたが応力による平面伸張応力評価手法の提案

【著者名】杉原 幸信,野崎 要,高橋 勉

【論文の要旨】一定の曲率で旋回する平面伸張流動場に生じるたが力に着目し,流脈線の可視化像から低粘度粘弾性流体の見かけの平面伸張粘度および緩和時間を評価する手法を提案した.縮小流路とハイドロダイナミックフォーカシング技術を組み合わせることで安定したサンプル流体のリボン状流脈線を形成した.本研究では,二次元旋回縮小部における流脈線の半径位置がサンプル流体に作用する平面伸張応力によるたが力と遠心力のつり合いによって決まると仮定した.そして,流脈線の半径位置の観察を通してサンプル流体に作用する平面伸張応力を推定することで,見かけの平面伸張粘度を評価した.さらに,直線状の二次元縮小流路の流出口へ幅一定の旋回流路をつなげた場合,直線縮小部で生じた平面伸張応力は幅一定の旋回部を通過しながら徐々に緩和する.この平面伸張応力の緩和挙動に基づく流脈線の変動から緩和時間を評価した.

 Vol.47,No.4に掲載されている英文論文の要旨

pp. 133-142

【英文タイトル】Relationships between Diffusion and Viscoelasticity of Associative Polymer Networks

【論文タイトル】会合性高分子網目の拡散挙動と粘弾性の相関

【著者名】大西美優,片島拓弥,中畑雅樹,浦川理

【論文の要旨】両末端疎水化ポリエチレンオキシド (HEUR) は,高分子濃度によって末端基の疎水性相互作用によりフラワーミセルや一時網目構造を形成する.HEUR の粘弾性緩和は Maxwellモデルによって記述される.この緩和挙動の分子論的な理解のために,多くの試みがなされてきたが,その理解は不完全なままである.会合性高分子の緩和メカニズムを理解するために,私たちは線形粘弾性と光褪色後蛍光回復法を用いて拡散係数を評価した.高分子濃度が増加に伴い,自己拡散係数は減少し,粘弾性緩和は遅延した.これは,粘弾性緩和が高分子の拡散と相関していることを示唆している.粘弾性緩和時間内に HEUR 鎖が拡散する距離は高分子濃度に依らず,HEUR 鎖のサイズよりも 100 倍程度大きくなった.この差は,低濃度ではHEUR 鎖が単量体やフラワーミセルの形態をとって拡散していることを,高濃度では網目鎖の再結合過程の拡散が粘弾性緩和と比べて速い過程で起きていることを示唆している.


pp. 143-154

【英文タイトル】Effect of Inertia on Linear Viscoelasticity of Harmonic Dumbbell Model

【論文タイトル】ダンベルモデルの線形粘弾性における慣性の影響

【著者名】畝山多加志,仲井文明 ,増渕雄一

【論文の要旨】慣性を無視した過減衰のダンベルモデルは高分子やソフトマターのレオロジー的性質を調べるための簡単なモデルとして広く用いられている.通常,慣性の影響は運動量の緩和時間がボンドの緩和時間より十分に速いとして無視される.本論文では,慣性が調和ダンベルモデルの線形粘弾性に与える影響について理論的に解析した.理論解析より,運動量とボンドの緩和は動的に結合しており,運動量の緩和が十分に速くない場合には慣性によってボンドの緩和が影響を受けうることがわかった.また,慣性の効果が弱い場合に慣性の効果を実効的に取り込めるLangevin方程式モデルが得られた.このモデルは慣性が比較的弱い場合のボンドの緩和ダイナミクスをよく再現できる.単純な調和ダンベルモデルとRouseモデルを用いて慣性がどのように線形粘弾性に影響するかを議論する.


pp.155-159

【英文タイトル】Rheological Properties of Concentrated Solutions of a Branched Polysaccharide Dextran in an Ionic Liquid

【論文タイトル】分岐多糖であるデキストランのイオン液体濃厚溶液のレオロジー的性質

【著者名】堀中順一,山中亜祐美,瀧川敏算

【論文の要旨】イオン液体を溶媒として用い,4.1 ´ 102 kgm-3以下のデキストラン濃厚溶液を調製した.デキストランは分岐度が約4%で分子量が200万前後の高分子量試料を用いた.ゼロせん断粘度の濃度依存性から,濃度が1.7 ´ 102 kgm-3以上ではデキストラン同士のからみ合いが生じていると判断され,それ以上の濃度では動的粘弾性にゴム状領域が観測された.一方で,デキストランのからみ合い挙動が非常に特異的であることがわかった.動的粘弾性の結果から常法にしたがって求めたからみ合い点間分子量は濃度依存性を示さず2.3 ´ 104で一定値となった.これは分子鎖あたりのからみ合い点数が100程度であることを意味するが,得られた動的粘弾性のゴム状領域はそれほど明瞭ではなかった.この特異性はデキストランの分岐構造に由来し,デキストラン分子は長い枝からさらに密に枝が出ている構造をもつのではないかと推測した. 

 Vol.47,No.3に掲載されている英文論文の要旨

pp. 99-104

【英文タイトル】Effect of Host-Guest Interaction on Swelling Behavior and Equilibrium Swollen State of Host-Guest Gel

【論文タイトル】ホスト‐ゲストゲルの膨潤挙動および平衡膨潤状態に対するホスト‐ゲスト相互作用の影響

【著者名】柏木優,片島拓弥,髙島義徳,原田明,井上正志

【論文の要旨】ホスト‐ゲストゲルは,β‐シクロデキストリンとアダマンタン間の動的架橋点により形成された超分子ゲルであり,強靭性と自己修復性を併せ持つ.先行研究から,ホスト‐ゲストゲルは動的架橋点に加えてトポロジカルな永久架橋点を有しており,これら2種類の架橋点が特異的物性を達成する要因であることを明らかにした.本研究では,ホスト‐ゲストゲルの膨潤挙動及び平衡膨潤状態に対する架橋点の効果を調べた.膨潤過程の解析から,動的架橋点は膨潤過程における高分子鎖の拡散にほとんど影響を及ぼさないことが明らかとなった.一方,競合剤下での平衡膨潤状態の解析から,水中における平衡膨潤状態においても動的架橋点は完全には解離せず,からみ合い点をトラップする働きを保持することが明らかとなった.これらの結果から,ホスト‐ゲストゲルの膨潤特性は,動的架橋点と永久架橋点の両方によって支配されていることが明らかとなった.


pp. 105-110

【英文タイトル】Rheological Evaluation of Carbon Nanotube Redistribution in Polymer Melt

【論文タイトル】高分子溶融体中におけるカーボンナノチューブ再分配のレオロジー的評価

【著者名】西川理穂, 好苑, 山口政之

【論文の要旨】高分子溶融体中における多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のブラウン運動を線形粘弾性測定により評価する手法を提案した.MWCNT3添加したポリカーボネートやポリエチレンに大きな変形を与えたのち,溶融状態で動的弾性率の時間変化を評価したところ,弾性率は時間と共に増加しやがて一定値に至ることが判明した.配向したMWCNTがネットワーク構造を形成するためである.また,弾性率の時間変化は,ブラウン運動によるMWCNT再分配に必要な特性時間を使用した簡単な式によって表すことができる.この特性時間はナノコンポジットの構造を制御するパラメータの1つと考えられる.


 pp. 111-117

【英文タイトル】Effect of Molecular Size on the Correlated Dynamics of Low-Mass Molecule and Local Chain Motion

 in Antiplasticized Polycarbonate

【論文タイトル】逆可塑化ポリカーボネート中における低分子と高分子鎖の相関運動に対する分子サイズの影響

【著者名】前田真衣,信川省吾,猪股克弘,山口政之

【論文の要旨】本研究では,逆可塑化ポリカーボネート(PC)中の高分子と低分子の運動の相関について調査した.逆可塑化は,低分子を添加することで高分子の弾性率が向上する現象である.極性低分子を添加した逆可塑化PCについて動的粘弾性測定と誘電緩和測定の実施し,それらの結果を比較したところ,低分子の運動性は25 oC以下では低く,それ以上の温度で高くなることが判明した.この運動性の温度依存性はマトリックスであるPCと類似しており,両成分の運動の相関性が示された.さらに,様々なサイズの極性分子を用い,PCの逆可塑化と局所運動に対する低分子のサイズの影響を調べた.その結果,室温(25 oC)の弾性率の増加の度合にはサイズの影響は確認されなかったものの,小さな低分子ほど,PCの局所運動に由来する緩和がブロードに観測された.さらに,低分子のサイズが小さくなるほど,運動の活性化エネルギーが低下し,マトリックスPCからの束縛が弱くなることも示された.


pp. 119-122

【英文タイトル】Structure and Viscoelastic Properties of Poly (Ether-Block-Amide) Thermoplastic Elastomers with No Ester Linkages

【論文タイトル】エステル結合が無いポリ(エーテルブロックアミド)熱可塑性エラストマーの構造と 粘弾性的性質

【著者名】前田修一,奥下洋司

【論文の要旨】硬質ポリアミドセグメントと軟質ポリエーテルセグメントからなる一連のエステル結合が無いポリ(エーテル - ブロック - アミド)熱可塑性エラストマーの構造と粘弾性特性を調べた.この研究で使用した全ての熱可塑性エラストマーは,固体状態で結晶ラメラを有する不均一な組織構造を示した.エラストマーの非晶質領域における不均一性および相溶性は試料組成に依存した.溶融状態での試料の動的弾性率には,相分離した液体に特有の明確で遅い緩和機構は観察されなかった.この結果は,ポリアミドとポリエーテルセグメントとの間の良好な相溶性のために,溶融試料が均一な構造を有していたことを示している.